研究用原子炉
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研究用原子炉または研究炉(けんきゅうろ、英語: Research reactor)は、放射線を利用した実験・研究や、原子炉自体の開発を目的とする原子炉である[1]。発電用原子炉(発電炉)とは異なり、核分裂反応に伴って発生する熱エネルギーは利用されない[2]。
分類
[編集]利用目的によって、材料試験炉(Materials Testing Reactor ; MTR)、教育訓練炉、ビーム炉(Beam Reactor)、ラジオアイソトープ生産炉などに分類される[2]。
材料試験炉
[編集]材料試験炉とは中性子線を様々な照射条件で照射することが出来るように設計された研究炉である。原子炉の燃料や構成材料を加速試験する等を行うことから、『原子炉を作るための原子炉』と呼ばれている。
高密度の中性子線を発生させることから、放射性同位体の作成にも使われている。
主な材料試験炉として、以下のものがある。
- アイダホ国立研究所(ATR)
- オークリッジ国立研究所(en:HFIR)
- オランダのペタン (HFR)
- フランスのカダラッシュ(en:Jules Horowitz Reactor) 、グルノーブル(HFR)
- ノルウェーのハルデン (HBWR)
- 韓国の大田 (HANARO)
- オーストラリアのOPAL炉
- 日本では大洗町にJMTRという原子炉がある。JMTRは熱出力 50 MWのスイミングプール タンク型原子炉で、反射体としてベリリウムとアルミニウムを使用している。4 × 1018 / m2・sの熱中性子および高速中性子の中性子束を作ることが可能である。
教育訓練炉
[編集]ビーム炉
[編集]ビーム炉とは、中性子を原子炉外へ取り出して利用する研究炉である。JRR-3M、京都大学研究用原子炉(KUR)などがある。
ラジオアイソトープ生産炉
[編集]ほとんどの研究炉でラジオアイソトープ(放射性同位体)の生産が行われており、専用のものはほとんどない。
臨界実験装置
[編集]臨界実験装置(りんかいじっけんそうち、critical assembly)とは、研究用原子炉の内で、炉心の核特性を実験するために組み換えが容易に可能であるように作られているものを指す。臨界集合体とも言う。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)施行令第十七条において、「炉心構造を容易に変更することができる試験研究用等原子炉であつて、核燃料物質の臨界量等当該試験研究用等原子炉の核特性を測定する用に専ら供するものをいう。」と定義され、原子炉等規制法第三十条の運転計画を作成し、届出をする必要が無いものとされている。
原子炉の設計を行うに当たって、炉心部と同様に核燃料、冷却材や減速材を配置して計算で求められた中性子束の密度などが予想通りかを調べるために用いられる。
一般に、出力は小さく、放射化も小さいので、遮蔽も無く手で炉心を組み替えたり、計器を設置することができる。
日本には
- KUCA 京都大学複合原子力科学研究所
- NCA 東芝
- FCA 日本原子力研究開発機構
- TCA 日本原子力研究開発機構
- STACY 日本原子力研究開発機構 (NUCEF)
- TRACY 日本原子力研究開発機構 (NUCEF)
等がある。
一覧
[編集]日本
[編集]日本には以下の研究用原子炉がある[3]。
- 原研JRR-1 日本原子力研究開発機構、濃縮ウラン軽水炉(ウォーターボイラー型)50kW、茨城県東海村、1957年8月臨界 - 1968年9月運転休止 - 廃炉。
- 原研JRR-2 日本原子力研究開発機構、90% (20%) 濃縮ウラン重水炉(CP-5型)10MW、茨城県東海村、1962年4月17日臨界(90%燃料) - 1970年10月1日臨界(20%燃料) - 運用停止
- 原研JRR-3 日本原子力研究開発機構、天然ウラン重水炉(国産1号炉)10MW、茨城県東海村、1962年9月12日臨界。
- 原研JRR-4 日本原子力研究開発機構、濃縮ウラン軽水炉(プール型)1MW(最大3MW)、茨城県東海村、1965年1月28日臨界。
- 原研JPDR 日本原子力研究開発機構、濃縮ウラン軽水炉(BWR型)46.7MW(電力12.5MW)、茨城県東海村、1963年10月26日初臨界、日本初の電力発電。1976年3月18日運転終了 - 1996年3月31日解体終了。
- 原研JMTR 日本原子力研究開発機構、濃縮ウラン軽水炉(タンク型)50MW、茨城県大洗町、1968年3月30日臨界。
- 原研HTTR 日本原子力研究開発機構、二酸化ウラン黒鉛炉(GCR型)30MW、茨城県大洗町、1998年11月10日臨界。
- 近畿大学研究炉 (UTR-KINKI) 濃縮ウラン軽水炉(UTR型)0.1W(後に1Wに変更)、大阪府東大阪市(旧布施市)、1961年11月11日臨界。日本初の大学所有の研究炉。
- 立教大学研究炉 (RUR) 20%濃縮ウラン水素化ジルコニウム炉(TRIGA-II型)100kW、神奈川県横須賀市佐島字松越、1961年12月9日臨界 - 廃炉。
- 五島育英会研究炉 (MITRR) 東京都市大学(旧武蔵工業大学)、20%濃縮ウラン水素化ジルコニウム炉(TRIGA-II型)100kW、神奈川県川崎市王禅寺、1961年12月臨界 - 廃炉。
- 京都大学研究炉 (KUR) 90%濃縮ウラン軽水炉(プール型)1MW - 5MW、大阪府熊取町、1964年6月25日臨界。
- 日立研究炉 (HTR) 10%濃縮ウラン軽水炉(プール付タンク型)100kW、神奈川県川崎市王禅寺(東京原子力産業研究所(TAIC研)株式会社内)、建設費は約1.4億円。1961年12月25日臨界。1962年8月に日立製作所から東京原子力産業研究所に譲り渡された。休止 - 炉心解体。
- 東芝研究炉 (TTR-1) 20%濃縮ウラン軽水炉(プール型)30kW(最大100kW)、神奈川県川崎市末広町(日本原子力事業総合研究所(NAIG研)内)、総工費は約1.5億円。1962年3月13日臨界 - 休止。
- 三菱研究炉 13%濃縮ウラン軽水炉(タンク型)30kWの研究炉を、三菱電機と三菱原子力工業が協力して、茨城県東海村字舟石川に設置する準備を進め、1962年8月に設置許可になっていたが、その後建設計画が取りやめになった。
- 東京大学研究炉(弥生)濃縮ウラン空気冷却高速中性子源炉2kW、茨城県東海村、1971年4月臨界。2011年3月休止予定。
- 動燃高速実験炉(常陽)MOX燃料Na冷却高速中性子型(FBR型)50MW、茨城県大洗町成田町
脚注
[編集]- ^ けんきゅう‐ろ〔ケンキウ‐〕【研究炉】 デジタル大辞泉
- ^ a b 研究炉の概要 (03-04-01-01) - 原子力百科事典ATOMICA
- ^ 原子力白書1961「研究用原子炉」