エリック・メーラー
エリック・メーラー | |
|---|---|
.jpg?lang=ja) メーラー （2014年） | |
| 生誕 |
1979年（45 - 46歳）[1] ドイツ |
| 出身校 | ベルリン技術経済大学 |
| 職業 | ジャーナリスト、ソフトウェア開発者、作家 |
| 肩書き | ウィキメディア財団副理事（2008年 - 2015年） |
| 公式サイト |
humanist |
エリック・メーラー（ドイツ語: Erik Möller, 1979年 - ）はドイツのフリーランスジャーナリスト[2]、ソフトウェア開発者[3]、著作家であり、サンフランシスコに拠点を置くウィキメディア財団（WMF）の副理事を務めていた[4]。
メーラーはウェブデザイナーとしても活動し、かつて自身のウェブホスティングサービス「myoo.de」を運営していた[4][5]。2022年時点では、報道の自由財団のエンジニアリング担当副部長を務めていた[6]。
著作
[編集]メーラーは『Die heimliche Medienrevolution – Wie Weblogs, Wikis und freie Software die Welt verändern』（「秘密のメディア革命：ブログ、ウィキ、自由ソフトウェアが世界を変える」）の著者である[7]。この書籍では、市民メディアやブログにおけるオープンソース運動のジャーナリズム的な発展について論じているが、大半のブログは主流メディアと競争するものではないと指摘している[8]。この書籍は2005年にハインツ・ハイス社から初版が出版され、2006年には改訂版が刊行された[7]。改訂版には更新された章が含まれている[9]。
『Berliner Literaturkritik』の書評では、実用的なアドバイスがある一方で、技術的な詳細に焦点を当てすぎていると指摘された[10]。メーラーの著書は2006年の『Wiki: Web collaboration』にも引用され、その中の「社会変革のエンジンとしてのウィキ」という節で「秘密のメディア革命」という表現が使用されている[11]。著者らは「メーラーはブログやウィキ環境における困難な論争や荒らしへの対処について包括的な視点を提供している」と述べている[11]。
メーラーはウィキペディアに関する初期の研究において、2003年にウィキペディアのオープンソース的性質が多くの個人の関心を引きつける一方で、専門家の関心を持つ分野には空白が生じることを指摘した[12]。彼の研究の一部は『Telepolis』に掲載され、ウィキペディアをデジタルマルチメディア百科事典『Microsoft Encarta』と比較した[13]。
2003年の記事『Das Wiki-Prinzip: Tanz der Gehirne』（「ウィキの原則：脳のダンス」）では、ウィキペディアとウィキの背景について解説し、プロジェクトの利点、記事の荒らし対策、ウィキペディア利用者のエチケットについて論じている[14]。
ウェブ関連のプロジェクト
[編集]メーラーは計算機科学の学位を持っている[4]。また、P2Pやファイル共有技術に関する情報を提供するウェブサイト『Infoanarchy』の所有者であり、創設者でもある[15]。『FreedomDefined』ウェブサイトの開発にも関与している[16]。
2005年にベルリンで開催されたブロガー会議で、メーラーはオープンソース・イニシアティブ、フリーナレッジ、およびウィキニュースについて講演し、後者をスラッシュドット、Kuro5hin、デイリー・コスなどの他のモデルと比較して論じた[17]。
同じく2005年、ウィーンで開催されたウィキに関するオーストリアの会議で、メーラーは統計データをまとめる際のウィキの利点について議論し、ウィキが内部の透明性を高め、同僚間の参加を促進することを指摘した[18]。
ウィキメディア財団
[編集]
2001年から、メーラーはウィキペディアを含むウィキメディア財団のプロジェクトに関わっており、MediaWikiやウィキニュースの編集者として、また開発者としても活動している[19]。 メーラーはユーザー名Eloquenceでウィキニュースの初期プロジェクト提案を起草した[2][20]。 また、ウィキメディア・コモンズの開発にも重要な役割を果たした[21]。 彼がウィキメディア・コモンズのアイデアを最初に提案したのは2004年3月である[22]。
メーラーは『ニューヨーク・タイムズ』に対し、ウィキペディアとウィキニュースの違いについて「ウィキニュースの記事は短命であり、一生残る知識基盤に貢献しているという感覚が薄い」と述べた[2]。 「我々は新しいメディアであり、自分たちのルールを作る」[23]と、2005年にソウルで開かれた市民記者フォーラムで説明した[24]。 ウィキニュースは毎日印刷版を発行し、記事の音声版を含む他のフォーマットにも取り組んでいると述べた[23]。
メーラーは『Journalism.co.uk』のインタビューで、2005年7月7日のロンドン同時爆破事件の日にウィキニュースのトラフィックが8倍に増加したことや、フリーニュースの影響について語った[25]。 「ウィキニュースはまだウィキペディアよりもはるかに小さいが、ニュース報道の可能性はウィキペディアの現状をはるかに超えている」とミューラーは述べた[25]。 彼はウィキニュースで定期的に「State of the Wiki」レポートを発表し、オリジナル記事と他のメディアの情報を統合した記事の両方を使用するプロジェクトの方針を擁護した[26]。
副理事
[編集]エリック・メーラーは2005年6月にウィキメディア財団の最高研究責任者に任命されたが、同年8月に理事会のメンバーとの個人的な相違を理由に辞任した[27][28]。オランダに拠点を置く非営利法人「Stichting Open Progress」の最高技術責任者を務めており[29]、これはOmegaWikiの法的母体であった[21]。そこでメーラーは、OmegaWikiの実装を担当する開発者チームのマネージャーを務めた[21]。また、WikiEducator.orgのような他のウィキコミュニティの運営も行った[21]。
2006年9月、アンジェラ・ビーズリーの後任としてウィキメディア財団理事会の理事に選出された[30][31]。そして同年10月には事務書記となった[32][33]。2007年12月に理事を辞任し、副理事に就任した[34]。この人事は2008年1月10日付で発効した[35]。副理事としてメーラーは財団の財務分析に携わり、事務局長のスー・ガードナーと共にサン・マイクロシステムズへ資金提供を求めるプレゼンテーションを行った[36]。このプレゼンテーションは後に『ウィキニュース』にリークされた[36]。
副理事として、メーラーは財団の技術戦略の管理および実行を担当した[21][37]。ロサンゼルス・タイムズの取材に対し、財団は契約内容に慎重である必要があると説明し、「我々の使命と矛盾するような契約を結ぶことで、それを危険にさらしたくない」と述べた[38]。また、メーラーはEncyclopedia of Lifeの機関評議会におけるウィキメディア財団の代表を務めた[39]。この関係を通じて、メーラーはアルフレッド・P・スローン財団（Encyclopedia of Lifeの支援団体）からウィキメディア財団への300万ドルの寄付を取り付けた。これは財団が受けた中で最大の寄付額である[40]。
2014年、メーラーは「Superprotect」権限を作成・導入し、ドイツ語版ウィキペディアのコミュニティによる決定を覆したため、ドイツ語版ウィキペディアでアカウントをブロックされた[41][42]。
メーラーは2015年4月30日にウィキメディア財団を退職した[43]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ Wahrheit braut sich zusammen Erik Möller im Gespräch mit Ada von der Decken Archived 14 January 2016 at the Wayback Machine., webwatching.info, retrieved 18 August 2014
- ^ a b c Weiss, Aaron (2005年2月10日). “The Unassociated Press”. The New York Times. 2008年5月12日閲覧。
- ^ Lih, Andrew (2004年8月7日). “The Foundations of Participatory Journalism and the Wikipedia Project”. Conference Paper for the Association for Education in Journalism and Mass Communications – Communications Technology and Policy Division, トロント, カナダ (jmsc.hku.hk). オリジナルの2008年2月27日時点におけるアーカイブ。 2008年5月13日閲覧。
- ^ a b c Moeller, Erik. “Erik Moellers homepage”. 2007年8月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月16日閲覧。
- ^ Moeller, Erik. “MyOO – wiki hosting”. 2007年8月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月13日閲覧。
- ^ Erik Moeller
- ^ a b エリック・メーラーの著作およびエリック・メーラーを主題とする文献 - ドイツ国立図書館の蔵書目録（ドイツ語）より。
- ^ “Schöne neue Onlinewelt? – Erik Möller beschwört eine "heimliche Medienrevolution" durch das Internet” (ドイツ語). Berliner Literaturkritik. berlinerliteraturkritik.de (2005年7月29日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Wie Weblogs, Wikis und freie Software die Welt verändern / Telepolis-Buch: "Die heimliche Medienrevolution"” (ドイツ語). Presseportal: Telepolis. presseportal.de (2006年2月3日). 2012年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月12日閲覧。
- ^ “Der blinde Fleck” (ドイツ語). Berliner Literaturkritik. berlinerliteraturkritik.de (2005年7月29日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ a b Ebersbach, Anja; Markus Glaser; Richard Heigl; Gunter Dueck (2006). Wiki: Web collaboration. Springer Verlag. pp. 28, 348, 378. ISBN 3-540-25995-3
- ^ Schwall, Johannes (2003年). “The wiki phenomenon”. University of Münster. pp. 10–11 2008年5月13日閲覧。
- ^ “Wenn die Gehirne tanzen” (ドイツ語). heise online. Heise Zeitschriften Verlag (2003年5月30日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ Möller, Erik (2003年5月9日). “TP: Das Wiki-Prinzip – Tanz der Gehirne”. Telepolis. heise.de. 2008年5月13日閲覧。
- ^ Mennecke, Thomas (2004年11月16日). “Top 10 File-Sharing News Alternatives”. Slyck News. slyck.com. 2008年4月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月12日閲覧。
- ^ “FreedomDefined.org: Was ist eine "freie Lizenz"”. Golem.de (2006年5月18日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Blogs vom Bauchnabel oder für die kritische Öffentlichkeit” (ドイツ語). heise online. Heise Zeitschriften Verlag (2005年9月5日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Wikis: Zurück in die Zukunft”. heise online. Heise Zeitschriften Verlag (2005年7月11日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ Kiss, Jemina (2004年12月15日). “Wikinews trumpets online revolution”. Online Journalism News (Mousetrap Media Ltd.) 2008年5月13日閲覧。
- ^ Allan, Stuart (2006). Online news: journalism and the Internet. McGraw-Hill International. pp. 136. ISBN 0-335-22121-1
- ^ a b c d e Donohue, Alex (2008年1月10日). “Wikimedia hires Moeller as deputy director”. Brand Republic News. Brand Republic. 2008年5月13日閲覧。
- ^ Möller, Erik (2004年3月19日). “Proposal: commons.wikimedia.org”. [Wikipedia-l]. ウィキメディア財団. 2008年5月13日閲覧。
- ^ a b Kiss, Jemima (2005年7月14日). “News round-up: Citizen journalism is officially cool”. Journalism.co.uk – Online Journalism News. Mousetrap Media Ltd.. 2007年11月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月13日閲覧。
- ^ Pollard, William (2005年7月11日). “Citizen Reporters Turn to Print for Delivery”. OhmyNews International. english.ohmynews.com. 2011年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月12日閲覧。
- ^ a b Kiss, Jemima (2005年7月13日). “Wikinews supercharged by London bombings coverage”. Journalism.co.uk – Online Journalism News. Mousetrap Media Ltd.. 2007年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月13日閲覧。
- ^ Kolodzy, Janet (2006). Convergence Journalism: Writing and Reporting Across the News Media. Rowman & Littlefield. pp. 238–239, 243. ISBN 0-7425-3886-9
- ^ Möller, Erik (2005年8月17日). “Resignation as CRO”. [Foundation-l]. Wikimedia Foundation. 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Chief Research Officer”. Wikimedia Foundation. 2007年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月13日閲覧。
- ^ Staff (2008年1月20日). “Bay Area Biz: Movers and shakers”. San Francisco Chronicle. sfgate.com. 2008年5月13日閲覧。
- ^ Kleinz, Torsten (2007年1月20日). “TP: Die neuen Herausforderungen der Wikipedia” (ドイツ語). Telepolis. heise.de. 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Resolution:Replacement Board member 2006 – Wikimedia Foundation”. Wikimedia Foundation (2006年9月26日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Wechsel an der Wikimedia-Spitze” (ドイツ語). heise online. heise.de (2006年10月28日). 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Jimmy Wales sai da presidência da enciclopédia online Wikipedia” (ポルトガル語). Carreira – IDG Now!. idgnow.uol.com.br (2006年11月6日). 2011年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月12日閲覧。
- ^ Gardner, Sue (2007年12月18日). “Announcing Erik Moeller as Wikimedia Deputy Director”. [Foundation-l]. Wikimedia Foundation. 2008年5月12日閲覧。
- ^ “Erik Möller Deputy Director – Wikimedia Foundation”. Wikimedia Foundation (2008年1月9日). 2012年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月12日閲覧。
- ^ a b “Zwei Millionen US-Dollar für Wikipedia & Co” (ドイツ語). heise online. Heise Zeitschriften Verlag (2008年1月9日). 2010年5月15日閲覧。
- ^ Staff (2008年1月13日). “Bay Area Biz : January 2008”. San Francisco Chronicle. sfgate.com. 2008年5月13日閲覧。
- ^ Semuels, Alana (2008年3月13日). “Wikipedia Experiences Growing Pains”. Los Angeles Times: p. Financial section
- ^ "Institutional Partners". Encyclopedia of Life. eol.org. 2014年6月4日閲覧。
- ^ Gardner, Sue (2008年3月25日). “Sloan awards Wikimedia USD 1m annually for three years”. [Foundation-l]. Wikimedia Foundation. 2008年5月15日閲覧。
- ^ Torsten Kleinz (2014年8月12日). “"Superprotect": Wikimedia behält das letzte Wort bei Wikipedia”. heise online. 2025年3月25日閲覧。
- ^ “Class war! Wikipedia's workers revolt again”. The Register. 2025年3月25日閲覧。
- ^ “A transition and a new chapter.”. Wikimedia-l thread (2015年4月13日). 2016年8月20日閲覧。
参考
[編集]- Bachner, Harald (2007). Wiki-systeme als Wissensmanagementtools. GRIN Verlag. pp. 6, 8, 29. ISBN 978-3-638-67365-5
- Gepp, Roman (2006) (ドイツ語). Bildung zwischen Luxus und Notwendigkeit. LIT Verlag Berlin-Hamburg-Münster. pp. 128, 129, 135, 192. ISBN 3-8258-9360-X
- Kühne, Stefan (September 2005). “Veni, vidi, Wiki! Rezension zu Erik Möller: Die heimliche Medienrevolution. Wie Weblogs, Wikis und freie Software die Welt verändern” (ドイツ語). E-beratungsjournal (e-beratungsjournal.net) (1). ISSN 1816-7632.
外部リンク
[編集]
- 公式ホームページ
- エリック・メーラーの著作およびエリック・メーラーを主題とする文献 - ドイツ国立図書館の蔵書目録（ドイツ語）より。
- “Erik Möller Deputy Director”. Wikimedia Foundation (2008年1月9日). 2012年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月27日閲覧。
- Infoanarchy.org
