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外延的定義と内包的定義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

外延的定義と内包的定義(がいえんてきていぎとないほうてきていぎ、英:extensional definition and intensional definition)とは、ある語が示す対象概念指示対象定義する二つの主要な方法。これらは語に意味(デノテーション)を与える。内包的定義は、その語を用いるべき必要十分条件を示すことで語に意味を与える。外延的定義は、その語の定義に当てはまるすべての対象を列挙することで意味を与える。

たとえば集合論では、平方数集合を外延的に{0, 1, 4, 9, 16, …}と定義できる。一方、内包的定義なら{ x | x は整数の二乗である }のように与えられる。

内包的定義

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内包的定義は、その語を用いるべき必要十分条件を示すことで語に意味を与える。名詞の場合、これは「その語の指示対象になるために対象が備えるべき性質を特定する」ことに等しい。

たとえば独身男性の内包的定義は「未婚の男性」である。この定義は妥当である。というのも、未婚の男性であることは「独身男性」であるための必要条件でも十分条件でもあるからだ。未婚の男性でなければ独身男性ではありえず、あらゆる未婚の男性は独身男性である。[1]

これは、定義に該当するすべてを列挙することによって与える外延的定義(=世界中の未婚男性を全て挙げる)とは反対のアプローチである。

このように、内包的定義は、明確に定まった性質集合をもつものに最も適しており、外延的定義では列挙しきれないほど多くの指示対象をもつ語にも有効である。無限個の指示対象をもつ語には外延的定義を与えられないが、内包的定義はしばしば簡潔に与えられる。たとえば偶数は無限にあるが、「偶数は2の整数倍」と述べれば足りる。

属と種差による定義――まず属(広いカテゴリー)に入れ、ついで種差(その下位類型を特徴づける性質)で区別する方法――は、内包的定義の一種である。名称が示すとおり、これは生物分類するリンネ式階層分類体系で用いられるが、生物学に限られない。たとえばミニスカートを「膝上丈のスカート」と定義するなら、属はスカート、種差は「より上」である。

内包的定義はまた、集合のすべての要素を生成する手続きを述べる規則公理系の形でも与えられる。たとえば平方数の内包的定義として「ある整数をそれ自身で掛けた形で表される数」と言える。「整数を取り、それ自身を掛ける」という規則は、どの整数を選んでも平方数の集合の要素を生み、逆に任意の平方数にはそのように自乗された整数が存在する。

同様に、チェスのようなゲームの内包的定義はルールである。そのルールで行われるゲームはすべてチェスであり、適切にチェスと呼ばれるゲームはそのルールに従っている。

外延的定義

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外延的定義は、語の外延――その語の定義に当てはまるすべての対象――を特定することで、語に意味を与える。

たとえば、世界の国々の外延的定義は、世界中のすべての国名を列挙したり、当該クラスのメンバーを識別する別の手段を与えたりすることで示せる。外延を明示的に列挙する方法は、有限集合にのみ可能で、しかも比較的小規模な集合に限って実用的であり、これは列挙的定義の一種である。

外延的定義は、具体例の列挙が他の定義より有用な情報を与える場合や、集合のメンバーを挙げること自体でその集合の性質を十分伝えられる場合に用いられる。

外延的定義は、集合の一部(必ずしも全てではない)を指し示して例示する直示的定義と似ているが、対象が当該集合に属するための性質を列挙する内包的定義とは明確に対照される。

語源

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内包と外延の語は、1911 年以前にコンスタンス・ジョーンズ英語版によって導入され[2]ルドルフ・カルナップによって形式化された。[3]

関連項目

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脚注

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  1. ^ Cook, Roy T. "Intensional Definition". In A Dictionary of Philosophical Logic. Edinburgh: Edinburgh University Press, 2009. 155.
  2. ^ "Emily Elizabeth Constance Jones: Observations on Intension and Extension". Stanford Encyclopedia of Philosophy. 7 August 2020. Retrieved 19 November 2020.
  3. ^ Fitting, Melvin. "Intensional logic". In Zalta, Edward N. (ed.). Stanford Encyclopedia of Philosophy.