宇宙作戦群
宇宙作戦群 Space Operations Group | |
---|---|
宇宙作戦群 | |
![]() 宇宙作戦群 シンボル・マーク | |
創設 |
2020年(令和2年)5月18日 宇宙作戦隊 |
廃止 | 2022年(令和4年)3月16日 |
再編成 |
2022年(令和4年)3月17日 宇宙作戦群 |
活動期間 | 2022年3月17日- |
所属政体 |
![]() |
所属組織 |
![]() |
編制単位 | 群 |
兵科 | 宇宙, 宇宙軍 |
兵種/任務 | 宇宙状況把握(SDA: Space Domain Awareness)[注 1] |
人員 |
約310名(令和6年度末時点)[1] 府中基地:約180名 防府北基地:約130名 |
所在地 |
府中基地(東京都府中市) 防府北基地(山口県防府市) |
上級単位 | 防衛大臣直轄 |
担当地域 | 宇宙領域 |
指揮官 | 杉山公俊 |
宇宙作戦群(うちゅうさくせんぐん、英称:Space Operations Group[2])は、航空自衛隊のスペースデブリ等監視部隊[3]。2022年(令和4年)3月17日、航空自衛隊府中基地に防衛大臣直轄部隊として新編された[4][2][5]。
本記事では、前身である宇宙作戦隊についてもあわせて記述する。
概要
[編集]

2022年(令和4年)3月17日、宇宙作戦群は「宇宙作戦隊」を母体とする宇宙領域専門部隊として新編された[2]。
防衛省は日本の人工衛星を守るため、不審な人工衛星や宇宙ごみを監視する体制の整備を本格化させると発表した[6]。
2022年度には、府中基地の作戦隊を「第1宇宙作戦隊」に改編した上で、関連装備を維持・管理する約10人の「宇宙システム管理隊」も置き、「第2宇宙作戦隊」を航空自衛隊防府北基地(山口県防府市)に新設し[7][8]、第2宇宙作戦隊を含む「宇宙作戦群」を拡充する。作戦群全体で120人程度に増やす[7]。なお、将官を指揮官とする専門部隊に改編予定である。宇宙作戦群は、レーダーや人工衛星を運用する宇宙状況監視(SSA)システムの運用が始まる2023年度に本格稼働を予定[7]。2026年度までにSSA衛星の打ち上げを目指している[7]。
シンボルマークは隊員が考案したもので[9]、正面の十字は宇宙を象徴する「星」をイメージし、地球及び衛星軌道は常続不断の監視をイメージ、6つの丸は、防衛省初となる宇宙監視専用レーダーを意味し、合計20個の星は、2020年に部隊を新編したことを意味している[10]。
任務
[編集]JAXAやアメリカ宇宙軍と協力し、宇宙空間の常時監視体制を構築する。これにより、スペースデブリや他国の人工衛星等が日本の人工衛星に影響を及ぼさないかの監視や日本の人工衛星を他国からの攻撃や妨害、それに宇宙ごみから守るための「宇宙状況監視」を行う[11][6]。宇宙状況監視には、第1宇宙作戦隊が運用する宇宙監視用のレーダーが用いられ、レーダーは山口県山陽小野田市の防府北基地(レーダー地区)に設置されている[12][13]。
他にも、電波妨害や不審な人工衛星や高度約3万6千キロの静止軌道の監視を行なう予定である[14][15]ほか、JAXAやアメリカ宇宙軍とも連携して「宇宙状況監視システム」を整備し、情報共有システムの構築を図る予定である[6][15]。
本格稼働は2023年(令和5年)度の予定[16]。また、JAXA、米軍と互いに情報を共有するシステムも、2023年度から運用が始まる予定[15]。
部隊の変遷・前身
[編集]宇宙作戦隊
[編集]「宇宙作戦隊」は宇宙作戦群の前身となった部隊である。
防衛省が2019年(令和元年)12月20日に発表した令和2年度予算案において、航空自衛隊に「宇宙作戦隊(仮称)」を新編する関連経費が盛り込まれた[17]。2020年(令和2年)1月23日に「宇宙作戦隊」新編などを盛り込んだ防衛省設置法改正案が第201回通常国会に提出され[18][19]、4月17日に可決、成立した[20]。部隊名は2020年5月8日に正式に「宇宙作戦隊」と決定された。
「宇宙作戦隊」は2020年(令和2年)5月18日、府中基地に大臣直轄部隊として発足し、初代隊長の阿式俊英2佐以下約20人が編成を完結した[6][14][21][16][22][23]。これに伴い、「宇宙」職種が新設された[21]。また、発足当時から100人規模への増員予定が報道されていた[24]。
2022年3月、「宇宙作戦群」新編に伴い廃止された。
2022年(令和4年)3月、宇宙作戦隊を母体として「宇宙作戦群」が新編された。 この時の宇宙作戦群は、群司令(1等空佐)を指揮官として、指揮官を支える群本部、宇宙作戦の指揮統制を担う宇宙作戦指揮所運用隊、宇宙状況監視を担任する宇宙作戦隊[注 2]で編成された[2]。 2023年(令和5年)3月にさらなる部隊改編が行われ、防府北基地に部隊が新編され2個宇宙作戦隊を擁する体制となった。
将来
[編集]2021年4月、第41回宇宙安全保障部会において、防衛省職員が「宇宙作戦団」や「宇宙作戦集団」へのアップグレード構想を語った[26]。 2022年12月、防衛力整備計画において、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編し、宇宙作戦群を置き換える計画が示された。
宇宙作戦群は、段階的に新編される「宇宙作戦団(仮称、2025年度末新編予定)」や「宇宙作戦集団(仮称)」の隷下に入る[26][27][28]。
2025年度に新編される「宇宙作戦団」では、将補を指揮官とした4個群320名規模に増員され、SDA衛星(後述)の運用能力を構築する[29]。
2027年度までの最終的な目標である「宇宙作戦集団」では、将官を指揮官として、隷下に「宇宙作戦団」「宇宙作戦指揮群」「宇宙作戦情報隊」が置かれる予定である[30]。
これらの宇宙領域専門部隊では、宇宙状況把握(SDA)[注 1]能力の整備が計画されている。
SDA整備の一環として、2022年度からSSAレーダーが運用されているほか、2026年度からSDA衛星の運用が開始される。このSDA衛星は静止軌道上で移動し、他国の人工衛星などを監視する[31][32]。
沿革
[編集]- 群本部、宇宙作戦指揮所運用隊を新編。
- 宇宙作戦隊を編合。
- 2024年(令和6年)3月21日:部隊改編
- 2025年(令和7年)3月3日:第1宇宙作戦隊が運用する宇宙監視レーダーの運用を防府北基地レーダー地区にて開始[37][13]。
- 時期不詳:「宇宙作戦集団」に改編。隷下に「宇宙作戦団」「宇宙作戦指揮群」「宇宙作戦情報隊」、4個の「宇宙作戦隊」を置く[30]。
部隊編成
[編集]宇宙作戦群:2024年(令和6年)3月21日現在[38]
府中基地
防府北基地
- 第2宇宙作戦隊(他国からの妨害監視を担任)
- 第2宇宙システム管理隊(衛星妨害状況把握装置等の維持整備を担任)
主要幹部
[編集]官職名 | 階級 | 氏名 | 補職発令日 | 前職 |
---|---|---|---|---|
宇宙作戦群司令 | 1等空佐 | 石井浩之 | 2024年12月20日 | 作戦システム運用隊司令 兼 横田基地司令 |
副司令 | 1等空佐 | 三輪大輔 | 2025年 | 3月 3日航空幕僚監部防衛部事業計画第2課 宇宙領域班長 |
第1宇宙作戦隊長 | 1等空佐 | 恩田雄太 | 2023年 | 3月16日宇宙作戦隊長 ※2024年1月1日 1等空佐昇任 |
第2宇宙作戦隊長 | 2等空佐 | 平山雅也 | 2023年 | 3月16日|
宇宙作戦指揮所運用隊長 | 1等空佐 | 窪田拓朗 | 2023年10月 1日 | 米宇宙軍連絡官 ※2024年7月1日 1等空佐昇任 |
第1宇宙システム管理隊長 | 3等空佐 | 平池泰周 | 2023年 | 3月16日|
第2宇宙システム管理隊長 |
代 | 氏名 | 在職期間 | 前職 | 後職 |
---|---|---|---|---|
1 | 玉井一樹 | 2022年 | 3月17日 - 2023年 3月15日航空幕僚監部防衛部事業計画第2課 宇宙領域班長 |
宇宙作戦群副司令 |
2 | 杉山公俊 | 2023年 | 3月16日 - 2024年12月19日航空自衛隊幹部学校 航空研究センター長 |
中部航空警戒管制団司令 兼 入間基地司令(空将補昇任) |
3 | 石井浩之 | 2024年12月20日 - | 作戦システム運用隊司令 兼 横田基地司令 |
関連装備品・施設
[編集]- 府中基地(東京都府中市):宇宙作戦群の拠点。
- SSA運用システム
- SSAレーザー測距装置 3式
- 防府北基地(山口県防府市)
- 防府北基地レーダー地区(山口県山陽小野田市海上自衛隊山陽受信所跡地)[12][39]
- SSAセンサーシステム(SSAレーダー)[注 5]
レーダ設備
[編集]SSAレーダ設備の計画時の性能諸元は以下の通り[37]。「旧海上自衛隊山陽通信所」を転用した「防府北基地レーダー地区」に設置されるが、府中基地の第1宇宙作戦隊が遠隔運用する。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 防衛省 (2024年3月26日). “防衛省の宇宙交通管理に関する取組について 令和7年3月 防衛省” (PDF). 内閣府. 2025年8月6日閲覧.
- ^ a b c d e f g “宇宙作戦群の新編について”. 航空自衛隊 (2022年3月19日). 2022年3月21日閲覧。
- ^ “「宇宙作戦隊」に20人、宇宙・サイバー「新領域」で人員増強”. TBS NEWS (2020年1月23日). 2020年1月23日閲覧。
- ^ “自衛隊「宇宙作戦群」が発足 指揮機能加え体制強化”. 時事ドットコムニュース (2022年3月18日). 2022年3月20日閲覧。」
- ^ a b “「宇宙作戦群」が発足 空自府中基地に新編(2022年3月17、18日)”. 朝雲新聞. (2022年3月25日). オリジナルの2022年3月25日時点におけるアーカイブ。 2022年3月28日閲覧。
- ^ a b c d e 日本放送協会. “自衛隊で初「宇宙作戦隊」発足 不審な人工衛星など監視へ”. NHKニュース. 2020年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月18日閲覧。
- ^ a b c d “山口・防府北に宇宙作戦隊 衛星への妨害行為監視 防衛省方針”. 時事ドットコム. 2021年9月12日閲覧。
- ^ 航空自衛隊府中基地に関する令和4年度概算要求の主要事業について (PDF) 令和3年(2021年)9月、防衛省
- ^ “「宇宙作戦隊」のマーク発表 隊員考案、星や地球イメージ―空自”. 時事通信
- ^ “宇宙作戦隊シンボル・マークについて(お知らせ)”. 2021年9月12日閲覧。
- ^ “まるで特撮? 新設の「宇宙作戦隊」は、実際どんな任務に携わるのか”. J-CASTニュース 2019年12月22日閲覧。
- ^ a b 防衛省 (2017年11月21日). “宇宙状況監視(SSA)のための山口県に所在する山陽受信所跡地へのレーダー配置について” (pdf). 山陽小野田市. 2021年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月14日閲覧。
- ^ a b 「防衛省の宇宙監視レーダー 国内初の運用始まる 山陽小野田」『NHK NEWS Web』2025年3月19日。2025年4月18日閲覧。
- ^ a b “防衛省が「宇宙作戦隊」発足へ、世界で“スペース軍拡"競う|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社”. ニュースイッチ Newswitch (2020年5月11日). 2020年5月18日閲覧。
- ^ a b c INC, SANKEI DIGITAL (2020年5月18日). “空自「宇宙作戦隊」発足でデブリや隕石監視、初の専従 米軍やJAXAと連携”. SankeiBiz. 2020年5月18日閲覧。
- ^ a b “宇宙作戦隊、空自に発足 レーダー監視で人工衛星守る”. 朝日新聞. (2020年5月18日) 2020年5月18日閲覧。
- ^ 文林堂 航空ファン No.807 2020年3月号 111頁-121頁 「航空最新ニュース」
- ^ “自民部会、「宇宙作戦隊」新設を了承 防衛省設置法改正案、今国会提出へ”. 時事通信社 (2020年1月23日). 2020年1月23日閲覧。
- ^ “無人機部隊編成へ法改正、防衛省”. 共同通信 47news (2020年1月23日). 2020年1月23日閲覧。
- ^ “「宇宙作戦隊」年度内に発足 改正防衛省設置法が成立”. 時事通信社 (2020年4月17日). 2020年4月27日閲覧。
- ^ a b c “空自に「宇宙作戦隊」発足 不信衛星やデブリを監視(2020年5月18日)”. 朝雲新聞. (2020年5月22日). オリジナルの2020年5月27日時点におけるアーカイブ。 2020年5月28日閲覧。
- ^ “【最新国防ファイル】航空自衛隊に「宇宙作戦隊」発足! 「宇宙状況監視」には米国、JAXAとの連携が不可欠”. zakzak. 2020年5月24日閲覧。
- ^ a b 防衛省 航空自衛隊 [@JASDF_PAO] (2022年3月19日). “3月17日(木)、#航空自衛隊 は、#府中基地 に #宇宙作戦群 を新編しました。”. X(旧Twitter)より2022年3月19日閲覧.
- ^ “「宇宙作戦隊」発足 宇宙ごみ、衛星監視―防衛省”. 時事ドットコム. 2020年5月18日閲覧。
- ^ 宇宙作戦群. “宇宙作戦群の沿革 - 宇宙作戦群ホームページ”. 防衛省. 2025年8月6日閲覧.
- ^ a b 内閣府宇宙開発戦略推進事務局 (2021年4月20日). “第41回宇宙安全保障部会 議事録” (PDF). 内閣府. p. 6. 2022年10月30日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF). 2025年8月1日閲覧.
今は宇宙作戦隊が約20 名で、今後は約70名に増やしますが、まだまだ人数的に少なく専門の教育プログラムもま だできていないのですが、今後、宇宙作戦群にして、宇宙作戦団にして、宇宙作戦集団に してどんどんアップグレードしていく予定なので、それに合わせた教育を検討していくこ とになると思います。
- ^ 鈴木, 一人 (2022年12月13日). “宇宙の衛星情報、データベース作成へ 「脅威」を察知 - 日本経済新聞”. 日本経済新聞. 2024年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2025年8月5日閲覧.
空自の27年度までの「航空宇宙自衛隊」への改称を見据え、25年度に宇宙作戦団(仮称)をつくる。
- ^ 防衛省 (2025年7月15日). “令和7年版防衛白書” (PDF). 防衛省. 2025年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF). 2025年8月1日閲覧.
- ^ 防衛省 (2025年4月2日). “防衛力抜本的強化の進捗と予算-令和7年度予算の概要-(令和7年4月2日掲載)” (PDF). 防衛省. p. 54. 2025年8月5日閲覧.
- ^ a b “海自に電子戦や偽情報対策担う部隊新設、25年までに2000人規模…3文書案”. 読売新聞オンライン (2022年12月10日). 2023年10月15日閲覧。
- ^ 防衛省 (2023年11月28日). “宇宙領域把握(SDA)に関する取組” (PDF). 内閣府. 2025年8月1日閲覧.
- ^ 防衛省 (2025年7月28日). “宇宙領域防衛指針(概要)” (PDF). 2025年8月1日閲覧.
- ^ 我が国の防衛と予算~防衛力強化加速パッケージ~ -令和4年度予算(令和3年度補正を含む)の概要-防衛省
- ^ “防衛力強化加速パッケージ ~「16か月予算」として編成~ 令和4年度予算の概要”. 防衛省 (2021年12月24日). 2022年5月5日閲覧。
- ^ a b c 航空自衛隊 宇宙作戦群 JASDF Space Operations Group [@JASDF_SSA] (2023年3月20日). “令和5年3月16日(木)、宇宙作戦群司令として杉山公俊(すぎやまきみとし)1等空佐が着任しました。同日、宇宙作戦群 は改編し、隷下に第1宇宙作戦隊、第2宇宙作戦隊及び宇宙システム管理隊が新編されました。”. X(旧Twitter)より2023年3月20日閲覧.
- ^ @JASDF_SSA (2024年3月29日). “航空自衛隊 宇宙作戦群 JASDF Space Operations Group”. X(旧Twitter)より2024年3月29日閲覧.
- ^ a b “山口県山陽小野田市における宇宙状況監視レーダー設置について|令和三年十二月防衛省”. 山陽小野田市. 2024年10月5日閲覧。
- ^ 宇宙作戦群. “宇宙作戦群隷下部隊エンブレム紹介 - 宇宙作戦群ホームページ”. 防衛省. 2025年8月6日閲覧.
- ^ “宇宙状況監視レーダー建設に伴う住民説明会の開催について”. 山陽小野田市 (2021年11月15日). 2021年11月15日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 宇宙作戦群ホームページ
- 航空自衛隊 宇宙作戦群 (@JASDF_SSA) - X(旧Twitter)
- 航空自衛隊府中基地ウェブサイト