速記書式制御記号
| 速記書式制御記号 | |
|---|---|
| Shorthand Format Controls | |
| 範囲 |
U+1BCA0..U+1BCAF (16 個の符号位置) |
| 面 | 追加多言語面 |
| 用字 | 速記 |
| 主な言語・文字体系 | |
| 割当済 | 4 個の符号位置 |
| 未使用 | 12 個の保留 |
| Unicodeのバージョン履歴 | |
| 7.0 | 4 (+4) |
| 公式ページ | |
| コード表 ∣ ウェブページ | |
速記書式制御記号(そっきしょしきせいぎょきごう、英語: Shorthand Format Controls)は、Unicodeのブロックの一つ。
解説
[編集]デュプロワイエ速記などの速記文字において、略語を表すために文字同士を重ねて書く場合など、筆記方法を変更するための制御文字が収録されている。元々デュプロワイエ速記のために設けられたが、速記における一般的な制御のため将来的にピットマン速記などあらゆる速記法にも適応できるようにしている[1]。
コードチャート内の代表グリフは任意のものであり、視覚的にはレンダリングされない[2]。
Unicodeのバージョン7.0において初めて追加された。
収録文字
[編集]| コード | 文字 | 文字名(英語) | 用例・説明 |
|---|---|---|---|
| 速記書式制御記号 | |||
| U+1BCA0 | | SHORTHAND FORMAT LETTER OVERLAP | 直前の文字に後続する文字1文字が重ねて書かれ、その後は重ねた文字を無視して文字が流れることを表す[1]。
例えば、"katkat"は通常𛰅𛱁𛰃𛰅𛱁𛰃と書かれるが、2つ目のk(𛰅)の前にこの書式文字を挿入することで𛰅𛱁𛰃𛰅𛱁𛰃のように2つ目のk(𛰅)が直前のt(𛰃)の前に重ねられて描画され、後半の"at"は直前のtから続くようにして書かれる。 デュプロワイエ速記及びチヌーク混成語では2つの線状子音、2つの円弧状子音、または任意の子音と重なり合う母音の場合、2つの文字は最初の子音のストロークに沿って約3/5、2 番目の子音のストロークまたは母音の中央に沿って約2/5で重なり合う[1]。 弧状子音と線状子音とのが重なり合う場合、弧状子音は弧の前半と後半に分割され、前半では弧が線に重なり、後半では線が弧に重なる[1]。 線状子音についても3/5、/ 2/5の点で、弧と垂直或いは可能な限り垂直に近い角度で交わり、弧の中央や端を超えることはない[1]。 ルーマニア語では長い線状の文字(U+1BC08-U+1BC0B)(b 𛰇,d 𛰈,v 𛰉,g 𛰊,r 𛰋)は、後続する2つの文字が重なり合うことがあるため、これはこの書式文字を2回重ねる( |
| U+1BCA1 | | SHORTHAND FORMAT CONTINUING OVERLAP | 直前の文字に次の文字が重ねて書かれ、それ以降は通常通りテキストの流れが継続することを表す[1]。
例えば、"katkat"は通常𛰅𛱁𛰃𛰅𛱁𛰃と書かれるが、2つ目のk(𛰅)の前にこの書式文字を挿入することで𛰅𛱁𛰃𛰅𛱁𛰃のように2つ目のk(𛰅)が直前のt(𛰃)の前に重ねられて描画され、後半の"at"は2つ目のkから続くようにして書かれる。 デュプロワイエ速記ではこの動作は子音、円母音、および子音と重なる有向母音字に限定されている[1]。 文字同士が重なる位置自体はU+1BCA0と同一である。 |
| U+1BCA2 | | SHORTHAND FORMAT DOWN STEP | 略記のため一部の音素を省略していることを表すため、テキストの流れのデフォルトの方向(つまり単語の右方向)ではなく、単語の下側に文字を続ける、すなわち、次の文字を前の文字の下に表示し、後続の文字は下げられたグリフを基準に進めることを表す[1]。
単語境界においては次の単語(または速記用の終止符)の位置が下げられ、この位置調整は前の単語の一部であるためこの書式文字で示され、その後に幅で定義されたスペース(U+2002 U+200B)と次の単語或いは終止符( 例えば、"mĩsa(チルダ記号は鼻母音を示す)"は通常𛰙𛱣𛰜𛱁と書かれるが、ĩ(𛱣)とs(𛰜)の間にこの書式文字を挿入することで𛰙𛱣𛰜𛱁のようにĩ(𛱣)の後ろに垂直方向のスペースが挿入されて後続するs(𛰜)と切り離されて描画される。 また、省略される語尾が接辞のような意味的に分割可能なものでない場合、その位置での改行を防ぐために、この制御文字の後にZWSP(ゼロ幅スペース)が挿入される。例えば、"dt"は通常𛰈𛰃と書かれるが、間にこの書式文字+ZWSPを挿入することで𛰈𛰃のように切り離されて描画される。 スローン現代速記及びユニバーサルフォノグラフィーでは略記のため、単語末尾において次の単語を低い位置で始め、前の単語の末尾の音を省略したことを表す[1]。 スローン現代速記ではZWSPと共に用いられ、語尾のoo/oが省略されていることを表す[2]。 現在はUnicode未収録だが、19世紀のイギリスで用いられた、クロスの折衷的速記(Cross' Eclectic shorthand)では最初の音素の欠落を表すため、その場合この書式文字の直前にスペースが挿入される[1]。 |
| U+1BCA3 | | SHORTHAND FORMAT UP STEP | 次の文字を前の文字の上に表示し、後続する文字は上げられたグリフ位置を基準に進められることを表す。DOWN STEPと同様に省略される語尾が接辞のような意味的に分割可能なものでない場合、その位置での改行を防ぐために、この制御文字の後にZWSPが挿入される[1]。
上方向の制御は単語の境界にのみ見られるが、この境界形式はこの書式文字に幅で定義されたスペース、そして次の単語(またはピリオド)が続くことで示される[1]。 例えば、"bie"は通常𛰇𛱈と書かれるが、間にこの書式文字+ZWSPを挿入することで𛰇𛱈のように後続のieが上方に移動し、bの右隣に配置される。 スローン現代速記及びユニバーサルフォノグラフィーにおいて、U+1BCA2と同様に語尾の音素を省略したことを表す[1]。 スローン現代速記ではZWSPと共に用いられ、語尾のuh/au/auiが省略されたことを表す[1]。 |
小分類
[編集]このブロックの小分類は「速記書式制御記号」(Shorthand format controls)の1つとなっている[2]。
速記書式制御記号(Shorthand format controls)
[編集]この小分類には速記書式制御記号のうち、速記文字の筆記方法を変更するための制御文字が収録されている。
文字コード
[編集]| 速記書式制御記号(Shorthand Format Controls)[1] Official Unicode Consortium code chart (PDF) | ||||||||||||||||
| 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A | B | C | D | E | F | |
| U+1BCAx | | | | | ||||||||||||
注釈
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履歴
[編集]以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
| バージョン | コードポイント[a] | 文字数 | L2 ID | ドキュメント |
|---|---|---|---|---|
| 7.0 | U+1BCA0..1BCA3 | 4 | L2/10-272 | Van Anderson (30 July 2010), Proposal to include Duployan Shorthands and Chinook script and Shorthand Format Controls in UCS (英語) |
| L2/11-303 | Van Anderson (27 July 2011), Proposal to include Duployan Shorthands and Chinook script and Shorthand Format Controls (英語) | |||
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出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Van Anderson (2011年7月27日). “Proposal to include Duployan Shorthands and Chinook script and Shorthand Format Controls” (英語). UTC Document Register. Unicode Consortium. 2025年10月21日閲覧。
- ^ a b c d “The Unicode Standard, Version 17.0 - U1BCA0.pdf” (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年10月21日閲覧.